瀬名秀明『ハル』文春文庫

ネタバレ一応注意。
ロボット/ヒューマノイドを題材にした、近未来SF連作。
…気に入りませんでした。
「連作」として話に大まかな共通性/方向性があるし、断章挟んでまとめられているんだけど、それぞれがなんだか散漫で、各編単体でも連作としても、高い評価はできません。「亜希への扉」の「ロボット・コンサルタント」の連作にでもした方が、まだまとまりがついたように思いますが。
科学的なディテールに関しても、「しっかり取材しました、ってだけの小説」という印象があって、ネタこそ違えどこないだの『防壁』となんか似ている。「テヅカオサム」や「アトム」という固有名詞も、効果的に使われているとは到底思えず、作者の個人的な思い入れが晒されているだけの無惨な情景。そして『パラサイト・イヴ』の時も書いたけど、「理系の人々」の造形にまったく魅力を感じられない。
…解説で類似性が指摘されている川端裕人は、「科学小説」としてのそういう要素をこないだ『The S.O.U.P.』にうまくまとめあげていたけれど。達成には歴然たる差があるように思います。
評価はC。

ハル (文春文庫)

ハル (文春文庫)