柴田よしき『猫は密室でジャンプする』光文社文庫

ネタバレ特になし。
「猫探偵・正太郎」のシリーズ短編集。
動物探偵モノって、えらい久々に読んだような気がします。このテの小説のキモは、動物の目を通して、人間存在の悲喜劇性、そのアイロニィを描くってところにあると思うのですが、これまでの作品でも若干の引っかかりをおぼえていたように、僕にはこの作家の人間観ってのがどうも一面的に思われる部分があって、その意味でこの作品も十分な達成とは思われませんでした。
むしろ猫自身の口から語られる、猫の生態蘊蓄を中心的に愉しみました。視点もさまざま、直球の本格からモダンなスリラーまで、手を変え品を変え読ませてくれますが、リーダビリティは認めつつ、それぞれの完成度はせいぜい並、というところですね。
評価はC+。

猫は密室でジャンプする (光文社文庫)

猫は密室でジャンプする (光文社文庫)