阿部陽一『フェニックスの弔鐘』講談社文庫

ネタバレ一応注意。
だいぶ昔の乱歩賞受賞作。「乱歩賞受賞作」って、もはや俺にとってはマイナスの肩書でしかないのだけど。
で、話のスケールは無闇にデカい。JFK暗殺にもその関与が語られる、アメリカを中心とした世界史の闇に蠢くファンダメンタリストの組織が、冷戦終結後の世界にハルマゲドンを起こそうとする話です。その後では彼らだけが甦ることができるとのこと…お前らの神様、料簡狭いな。
マディソン・スクエア・ガーデンに「ハイジャックされた飛行機が突っ込む」という展開、現在読めば執筆当時の作者が込めた以上の意味が読み取れるけど、未来予知小説としては残念ながらその陰謀史観にリアリティがないし、かと言って活劇/アクションの部分は、キャラクタ造形の生硬さと見慣れぬ固有名詞の頻出…というか乱舞にテンションが削がれる。正直に言うと登場人物一覧を見た時点でオチていた。最後まで名前とその役職が一致していたのは、ミハイル・ゴルバチョフただ一人でありました。
俺の読書遍歴にあまりないタイプの小説で、楽しみ方は最後までよく分かりませんでした。トム・クランシーとかこういう感じなのでしょうか。ただあまりウケなかったであろうことは、作者のこれ以降の作品をまったく存じ上げないことからも推察されるところではありますね。
評価はC。

フェニックスの弔鐘 (講談社文庫)

フェニックスの弔鐘 (講談社文庫)