石井敏弘『風の魔術師』講談社文庫

ネタバレ注意。
ホント俺自身、本棚から何が出てくるのか分からないんですよ…。
とはいえこの本の場合は分かりやすい。乱歩賞作家。これが講談社での二作目で、前作『風のターン・ロード』で乱歩賞獲って世に出ています。しかし現在は残念ながら消えてしまっていて、本格読みの間では、この回の乱歩賞がかの『占星術のマジック』、後の『占星術殺人事件』に与えられなかったことの方が有名だったりするのではないでしょうか。
で、乱歩賞と言えば軽いミステリに混ぜる専門の蘊蓄が眼目ですが、この人の場合は「バイク」と、さらにはそれを補強する「ロック」。どちらのロマンティシズムもちょっとハズしているし、女性キャラの造形が類型的で気持ちが悪いし、それで血縁のない姉弟の恋愛とか書かれてもお寒い限り。主人公はバイクで吹っ飛んで死を覚悟した瞬間、慄然と姉への思いに気付いたりするのだよ。寒いね。
ミステリとしてのメインの事件も行き当たりばったりで、解決も短絡的な芋蔓式。…それほど大きく破綻をきたしているわけではないが、粗を探せばキリがない、とそんな小説でした。
そして解説の関口苑生。なんと言うか…面白くないよその天丼。こんな昔から下読み自慢やってんだね…。
評価はC。

風の魔術師 (講談社文庫)

風の魔術師 (講談社文庫)