ネタバレ注意。
今までも大概だったので、不安は大きかったのですが、それを裏切らない酷さでした。
交通事故で記憶を失った主人公が「自分探し」をするお話。序盤、母を喪った主人公が、退院して自分の生活を始める辺りはまあ面白くて、応援したくなるような感じだった。しかし地元に帰ってある女性と再会、それが話の中心となって以降は、それまで真面目で清廉だった主人公が豹変、独善性剥き出しで突っ走り始め、その様子が気持ち悪くてついていけなかった。病院での仲間やご近所の若夫婦、いい感じで伏線になりそうだったキャラクタたちも放りっぱなしで。
結局彼は元々ヤンキーのくだらない人間だったわけで、それはそれで「描けている」のかもしれないし、プロローグやエピローグで描かれるところの、この小説の隠れた主題…「母性」にも見合ったものであるのかもしれない。でもそうしたら聡子の魅力は絶望的に足りていないし、この小説全体に漂う気持ち悪さが、それでフォローされるものでもないと思う。
基本的に、独善的な作家ですよね。
評価はC。
- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/02/01
- メディア: 文庫
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