野沢尚『魔笛』講談社文庫

ネタバレ一応注意。
宗教テロリズムに材を採ったミステリ。
乱歩賞最終候補作のリライトらしいが、確かにこうまでオウムオウムしてると正賞は難しかろうな、と思う。
俺は興味のある題材だったのでなおさら、そのチャレンジングな主題を買いたいけれど、またそれを離れても読ませる力のある作品ではある。宗教とか公安とか、メインの題材/プロットはシンプルで分かりやすい。
ただ、野心作であるが故に、いろいろと詰め込み過ぎたきらいもあって。主人公格の刑事と妻に「レクターとクラリス」みたいな設定が入れられているんだけど、正直中途半端で成功しているとは言い難いし、主人公への感情移入の阻害と、小説としての散漫さを産む結果にしかなっていないような。それを描くなら、照屋礼子の人物像をもっと掘り下げて欲しかったように思う。
いろいろ入れないと、あまりにあからさまだったかな…。
評価はB。

魔笛 (講談社文庫)

魔笛 (講談社文庫)