逢坂剛『水中眼鏡の女』集英社文庫

ネタバレ一応注意。
短編集。
どれも精神分析がネタになっていて、短編としては贅沢なトリック趣味も含めて、作家の志向を感じさせます。サイコ・サスペンスというよりは、そのものずばりサイコ・ミステリの名に相応しい作品集ではあるでしょう。
そのスピリットには共感と信頼を感じるけど、そのサプライズとカタルシスに対する有効性にはやや疑問が残りました。ストイシズムが武骨さに繋がり、小説としての瑞々しさを奪ってしまっているような。そういうのが好きな僕の、単なる好みの問題かもしれないけれど、西澤保彦のような、ああいう心理的なアプローチのが好きです。心理学と精神医学はまた違ったものではあるでしょうが、もちろん。
一編挙げるなら「ペンテレジアの叫び」。シチュエーションが『』みたいで好きでした。
評価はC+。