垣根涼介『ワイルド・ソウル』『ラティーノ・ラティーノ!』幻冬舎文庫

ネタバレ特になし。
新世界より』に続き、シルバーウィークの長編消化。
評判がいいのは知ってたんだけど、『午前三時のルースター』『ヒートアイランド』という既読の作品がアレだったので、消化前提で読みました。でも、本棚に残すまでではないにせよ、「ダメ作家」という固定観念を覆す程度には面白かったです。
直後に読んだ取材旅行記ラティーノラティーノ!』に詳しいように、綿密な取材による「棄民政策」・「アマゾン牢人」の実際や、南米・アマゾンの風土の描写はこまやかで、力がある。松尾とケイ、中心人物の魅力と迫力にもしっかり裏打ちがあって、またそれに引っ張られている部分も大きいだろうけど作品全体に、血族の怨讐を晴らすテロリズムという題材を扱っていながら、どこかラテンフレイヴァな、心地よく乾いた風情があって、読んでいて純粋に楽しめるクライム・ノヴェルに仕上がっていました。こういう読み心地は結構珍しいんじゃないかな。
うん、前の二つよりは全然面白かったです。…でも、さよならします。
評価はB。

ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)

ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

ラティーノ・ラティーノ!―南米取材放浪記 (幻冬舎文庫)

ラティーノ・ラティーノ!―南米取材放浪記 (幻冬舎文庫)