ハナレグミ 『あいのわ』

4th。
とにかく「光と影」が抜群に素敵。
すごくシンプルな言葉とメロディで形作られた楽曲と、ゆるやかであたたかい音像、そして絶対無敵の魅力を放つ歌唱。ザ・スタンダード・オブ・ハナレグミとして、「家族の風景」に比肩し得る名曲だと思います。
アルバム全体通して見ても、九曲入りってのは今の時代フルアルバムとしては珍しい曲数だし、もちろんブルースやヒップホップ、ファンクなんかのフレイヴァやユーモアが彩りを添えてはあっても、楽曲の構造も基本的にシンプルで、音数も少なく、ゆるやかで、「隙間」の多い音楽表現ではあるのですが…それがなぜにこうも微塵も物足りなさを感じさせず、豊かに聞こえるのでしょう。
もちろん永積タカシのヴォーカリストとしての天才は言うまでもないことだし、「唄心」といったレベルに彼のポップ・マジックを押し込めてしまうのはとても窮屈なのですが。でももはや彼の音楽はそれ以上の意味付けや批評がまったく意味を成さないレベル、ただそこにあるだけで、ゆるやかに響いているだけでいとおしい、とても貴重なものになっていると思うのです。

だれでもない どこにもないぜ
君だけの光と影
光の先の闇を見に行こう
光と影
(「光と影」)

「光と影」と題されながら、両者がまったくフラットに描かれるこの感動的なミディアム・バラードは、ハナレグミという音楽家の「唄心」と、なによりそのフラットで自由な姿勢を象徴しているようで。問答無用で名曲なのですが、大上段に構えない、そのフラットな感じがとても素敵だと思ったのです。なんか、エロいしねw

あいのわ

あいのわ