湊かなえ『告白』双葉社

ネタバレ一応注意。
言わずと知れた本屋大賞受賞作。昨年末のミステリ関係年次ランキングも席巻されておりました。刊行10か月弱で24刷ですかー。すごいね。つかこまめ。
で、言われていたように確かに黒いは黒い。中学生たちの歪んだ自意識も、女教師の妄執も、確かに厭な印象で迫り来るけれど、打ちのめされるようなものではなかった。むしろ俺はそれを下支えする、リーダビリティの部分に感心する方が印象のメインだった。
中心にある「事件」とその「真相」と「展開」が、それぞれ視点人物を変えて描写される。そこには確かに厭なインパクトがあって、でも下品な印象はなくて、そしてページを繰る手は止まらない、その「読ませる」筆力は相当のものだろう。並の筆力だったら、「冒頭の短編一作だったら傑作ホラーだったのに、長編にしたら凡庸なミステリになっちゃった」って感じだと思うが、前者はまあ一抹そうした印象がないわけでもないにせよ、一冊の長編としての高い満足度は、なによりその構築的な筆力の証明だと思う。
以前はラジオドラマを書いてたらしいけど、さもありなんという感じ。全編にわたって一人称の「語り」を用い、その中で情報の取捨選択と、強弱つけた提示を行うその筆の運びは、いかにも耳で聴かせるのに適したものだ。でもこんなん、深夜のラジオドラマでうっかり聴いたりしたら寝れなくなるよね。 ホットミルクにも逃げられないしw
評価はB+。

告白

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