RADWIMPS 『アルトコロニーの定理』

5th。
しかしチャットの傑作の一週間後にラッドの新作が出るとはね。今まで交互に聴き倒してきたけどまさに至福。本格ミステリにおける1996年に匹敵する、2009年は邦楽ロックにおける実りの季節ではなかろうか。
で、タイトルからバンド名ナンバリングの取れたRADWIMPS5ですが。まず印象的なのは良メロの嵐。そしてキラキラとまばゆいギター・ロックとして鳴った曲の多いこと。でも耳を凝らして聴いてみると、フリーキーなプレイや凝ったアレンジに唸らされる、奥深い構成になっています。圧倒的な喪失感に支配されていた前作から、表現の段階がひとつ大きなステップを上がったことは、たとえば「One man live」や「叫べ」に見られる、かつてなく平易で開かれた詞作からも感じ取ることができます(詳しくはのちほど)。
正直に言って、「ふたりごと」や「有心論」のような絶対的なアンセム、「25コ目の染色体」のような極北のラブソングも持ち得ていないけれど、それでも「オーダーメイド」は珠玉だし、一枚通して聴いた時のお気に入り度は『3』と張るのでは、と。『4』はどうしても「ふたりごと」と「有心論」ばっかり聴いちゃうからな。
では何曲か、特に耳にとまった曲をメモ。

3. バグパイプ
全英語詞。
詞だけ読んでたら完全に失恋回顧自己嫌悪ソングなんだけど、音像がやたら明るい。立ち直ったんか。
タイトルがなんか深読みできそう。多くは語るまい。

4. 謎謎
「オーダーメイド」と張る、このアルバムのベスト。このキラキラしたポップ・フォーマットに乗せた、「君」を絶対肯定するその感動的な盲目性! 本当に全文引用したいぐらいの素晴らしい詞で、俺はマジに何回聴いても泣く。
長くなるけどワンコーラスだけいいですか。

君とは死ぬまで別れることはないと思うけど 僕にはいつ別れがくるかわからないものはなーんだ
だけどそれでもいいと思えるものはなんだ だってそれだからこそ出会えたものはなーんだ

そうだ 出会ったんだ あの時出会ったんだ
すべてになったんだ それはまるで それは 君は

夏の次に春が来るように
昼の次に朝が来るように
梨の木に桜が成るように
僕の前に現れたんだ

雲の上に雨が降るように
瞳から鱗が落ちるように
そのどれもがいとも簡単に
起こるような気がしてきたんだ

…(感涙)。
だってさ、「謎謎」なんてタイトルで、答えが「君」に繋がる問答を延々引っ張るのかと思ったら、すぐ我慢できなくなって≪それは 君は≫とか答え言っちゃうんだぜ。泣くだろうよ、それは。

6. One man live
疾走感で押し切るタイプのロックチューン。

もしも折れかけたその足に痛みを感じなければ
君は何も知らず 歩き続けるだろう
傷ついたことに気付いてと願う その痛み達は
君を守るためにそこにいたんだよ

ならば もう もう恐いものはないんだと

ラッドには極めて珍しい応援歌風の歌詞がサビで目立つけど、でもラストに至ってみれば、謳われていたのは安っぽい連帯や救済ではなく、「一人」で「痛み」を引き摺って歩き続けなければならないという「現実」だったことに気付く。タイトルはその人間の生そのもの。力強く孤独な歌だ。

9. 雨音子
ラジオで先行して流れてた時はなんかいまいちな印象だったけど、音源で聴いたらぐっと良かった。
とにかく陽性の音とライミングが気持ちいいねん。アホみたいな感想だけど。

10. オーダーメイド
そして異形の名曲がここに。
シングルの時に語りつくした。

…といったところでしょうか。
しかしホント、特に「謎謎」と「オーダーメイド」はやばいと思う。ロックはこんなにも感動的に愛を描けるのかという奇跡の表現。そんなこと「愛し」の昔から分かっていたことだけども。

アルトコロニーの定理

アルトコロニーの定理