ネタバレ注意。
待望の小市民シリーズ第三作。前作があんな感じだったので、期待と不安高まる新作でしたが。
最初に言っとくと、どこか釈然としない気持ちは残ります。それは「上下巻も使って、なんでモトサヤに戻る話読まされなあかんねん」という意味において。しかしそれも、予定調和と言うにはあまりにビターでブラックな味わいを通してのことなのですが。
小鳩くんと小佐内さん、それぞれのあぶなっかしい男女交際模様と、仄かな事件ともう一人の視点人物によるその捜査、そしてブラックなオチの予兆を中心として物語は展開します。青春小説の書き手としての確立された手腕に感心しながら読んでいくと、待っているのは前者に関する予測された破綻と、後者に関する予想の斜め上をいって黒いオチ。小鳩くんに対置されるもう一人の主人公、瓜野くんは立ち直れるのでしょうか…以降一切出てこないけどw その「愚」直さはたしかにいささかうざったいものではありましたが、この仕打ち。 一切フォローなしw
シリーズとしては「めでたしめでたし」のハズなのに、こうも黒い気持ちになるのはなんでだろうね。ラストのセリフも素敵だし、さすがだわ米澤。
では最後にお気に入りの小佐内をひとつ。
「何も殺さずに食べられるから。牛を殺さなくても、ミルクは搾れる。鶏を殺さなくても、卵は採れるの」
その眼差しは、思いがけず冷えきっている。
小佐内は再びスプーンを動かすと、黒いアイスクリームの最後のひとかけらをぺろりと口にする。そして、
「冗談」
と言った。
「甘いから、好きなの。それだけよ」
(167p)
「冬季限定」が怖いぜ。
評価はB。
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