サカナクション 『シンシロ』

3rdアルバム。
前からスペシャとか見てて気になってたバンドではあったんだけど、この作品の評判がよかったので買ってみました。期間限定で二千円。
で、コストパフォーマンス高いです。ダンスビート/エレクトロニカとロックの融合、というのは巷氾濫する方法論ですが、このバンドはしっかり世界観持ってる。やっぱ北海道の音楽家ってのは感性澄んでるよね、という清澄なイメージの広がるロックンロールです。
エレクトロニカ一辺倒じゃなくて、時にフォーキーだったりノイジーだったりするのも面白い。ボーカルの声質も、そんな曲ではなんかハナレグミの如き味わいを聴かせたりもして。
しかしこの、テクノ的高揚感とロック的抒情性の高次元での融合は、サウンドプロダクションの面でもそうだけど、詞作の影響も大きいと思って。広がる宇宙のイメージを描き出すキラーチューン「セントレイ」でも、逆にしっとりしたリリシズムの極みのようなメロディがズシンとくる「enough」のような曲でも。

僕は行く 夜中を目で追い続けて 淋しくなる月を抜けて
千の最後までほら 手で数えたら 見えてきたんだ 見えてきたんだ
(「セントレイ」)

庭で死んでいた蝉を見て いつか一人になると知った 本当です 本当です
その時にはどうか悲しみが僕に残っていませんように だけどさ だけどさ

何度でも何度でも 嘘つくよ 人らしく
疲れても それしかもうないんだ
(「enough」)

ロックのロマンとリリシズムが、実に自然に描き出されてると思います。虚仮おどしとか自虐と感じさせないところが、もちろんサウンドプロダクションのセンスと合わせて、本能とか感性とか呼ばれる部分なんだろうなあと思う。やっぱ北海道か。
前述の二曲と、そのような天性の「ロック的文学性」への自覚が、高らかな宣言として鳴らされた「アドベンチャー」が特にお気に入り。まあ全曲いいけどな。

Utopia 確かめるよ 繰り返すロックと本
混ざり合うかどうかを
Utopia 夜の檻を 抜け出すための秘密
サラウンドで探す旅
(「アドベンチャー」)

シンシロ(2009年2月末迄期間限定生産価格盤)

シンシロ(2009年2月末迄期間限定生産価格盤)