花村萬月『風に舞う』集英社文庫

ネタバレ特になし。
いかにもこの作家らしい、タイトルそのままに軽やかな音楽小説。この作家「らしさ」って、以前はバイオレンスにあるものだとイメージしてたんだけど、集英社文庫からの作品を連続で読んでイメージが変わった。好きです。そもそも「すばる」だったんだよなあ、出自は。
キャラクタの造形も、音楽的ディテールも、気の利いた、でもわざとらしくない文章・会話の妙も、すべて過不足なく、自然に配置されている。読んでいて心地のいい、爽やかな小説だ。
特にツンデレの女子大生作家という属性の与えられたヒロイン、操は抜群に魅力的。主人公とのカラミのセックスシーンも、その描写のお手本のように、ロマンティックかつナチュラルで、なかなか素敵。
しかし…最初は紛うことなきロックバンドだったのに、なぜか最終的にはブルースに帰着するんだよなあ。この作家がブルースの人だってのは分かるし、そもそも親和性はあるんだろうけど。別にいいんだけど…最後までロックしてくんねえかなーとロックファンは思うのでした。
評価はB。

風に舞う (集英社文庫)

風に舞う (集英社文庫)