ネタバレ一応注意。
面白かった。蔵書整理のために読んで、たまにこういう面白い小説に当たると始末に困る。
連作短編の体で、グリーンランドの酷寒、インドの灼熱、ギリシャ神話を模した匣庭空間、日本の学園都市…とそれぞれに神を模した青銅の巨大ロボットがいて、それをある目的から「殺す」ことを求められた人間がいて…と、こうやってあらすじだけ記すと荒唐無稽な世界観。しかし、精神分析用語や各地の神話をガジェットに用い、ハードな語り口で読ませる。物語作家としての確かな手腕が、トンデモな奇想をエンタテインメントとして昇華している。
ラストはリオデジャネイロ、カーニバルの狂騒から行き着く先は、アマゾン奥地の「神」の総元締めだ。そんなに長くはない作品だけど、「巨編」と呼ぶに足るスケール感に物語の愉しみが横溢している。『チョウたちの時間』の時にもそんなことを書いたけど、「分からないけど愉しい」、そんな物語作家の性能を体現する、エンタテインメントSF巨編である。
評価はB。
地球・精神分析記録(エルド・アナリュシス) (徳間デュアル文庫)
- 作者: 山田正紀,ヨコタカツミ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2001/08
- メディア: 単行本
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