柴田よしき『RIKO -女神の永遠-』角川文庫

ネタバレ注意。
横溝正史賞を獲ったデビュー作。桐野夏生が道をつけた「3F」ハードボイルドの路線。角川もこういうタマが欲しかったのであろうよ。
で、その路線に忠実な犯人の造型、付随するミッシング・リンクカタルシスなど、光る部分のある小説だが、(被)抑圧的で愚劣な「男性」と、その原理が支配的な警察組織、そしてその中で自由奔放で、偶像的にさえ描かれる「女性」性の賛美、その圧倒的な差と思想性(のベタさ)には鼻白むものをおぼえた。真犯人の造型のために意識的にやってるなら許せるんだけど、この人そんなの全然関係ない小説*1でもフェミニズム臭いんだよなあ。
坂木司なんかはそもそも話にならないんだけど、近藤史恵クラスの巧い作家でさえ高い達成は示せていないのだから、小説に書くには最高難度のシロモノなのかもしれない、フェミニズムってやつは。
評価はB−。

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

*1:『風精の住む場所』だっけ。