近藤史恵『昨日の海と彼女の記憶』PHP文芸文庫

ネタバレ一応注意。
四国の海辺の町に住む男子高校生が、Uターンした伯母と従妹との同居をきっかけに、ファミリー・ヒストリーの謎に向き合う、青春家族ミステリ。
展開されるドラマ、提示される真相にそれほど心動かされるものはなかったが、筆の運びは流麗だし、登場人物たちにも好感を持ちながら読むことができる。初期近藤史恵っぽい残酷さも仄かにその香りがあるが、基本的には南国の潮風が吹き抜ける、カラリと爽やかな作品…こういうエンタメ書く作家になるとは、正直思わなかったな。
たまに悪癖として出る刺々しいフェミニズムは抑えめで、それも爽やかだと思ったけど、解説の人はどうしてもそれに触れたいみたいで、気が合わないなあと思いました。
評価はC+。