古野まほろ『天帝のつかわせる御矢』講談社ノベルス

ネタバレ注意。
天帝シリーズ第二弾は、「環大東亜特別急行」を舞台に展開される、本格ミステリと並行世界SFのハイブリッド。
てゆーか、めっちゃ面白い。まず何より、大枠の世界観と、舞台設定のエンタテインメント性がきちんと関与していて、物語としての面白みが格段に増した。豪華寝台列車に惹かれないミステリファンなどいないであろうよ。ましてそれが戦火の満州を出発して樺太→北海道→本州→対馬と環状をなすなんて設定ではな。
過剰なのは設定の絢爛さだけではなく、推理合戦とその後のドタバタにより真相が特権性を失ってしまうような疾走感溢れる書きっぷりも健在で、日和ってはいない。好ましい。
そして今回は特に、推理合戦時における美沙のキャラクタが出色。「探偵小説神の巫女」として讃えようと思ってたら、まったく同じ比喩が出てきてなんか嬉しかったりした。
評価はA−。

天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)

天帝のつかわせる御矢 (講談社ノベルス)