森博嗣『ジグβは神ですか Jigβ knows Heaven』講談社ノベルス

ネタバレ注意。

「悲観的ですね」
「科学者というのは悲観的な人間です。真賀田博士も科学者ですし、世界一の天才なのですから、世界中の誰よりも悲観しているはずです。楽観しているのは、計算をしない幸せな凡人たちよ」
(276-277p)

お久しぶりのGシリーズ、と言うか森ミステリィじたいが久しぶりだということに、そしてこんなにも楽しい読書が久しぶりだということに気付いた。
まあいろいろと屈託を感じないでもないのだけど、芸術家が集う新興宗教のコミューンって舞台設定がこの上なくツボだし、加部谷一派の掛け合いはいちいちおかしい*1し、キャラクタたちのサービス精神たっぷりのカラミ(睦子と紅子の会話とか!)もありで、いつまでも終わってほしくない、懐かしいピュアな高揚感が味わえました。
ミステリとしても、ホワイダニットにヒザをうつものがあるし、折々の推理やロジック、その断片のひとつひとつもとてもスリリングです。ラストだけ蛇足に感じられないでもないですが、とにかく何度でも言える、久しくこんなに楽しい読書はありませんでした。
なんだかんだ言って、やっぱ森博嗣好きなんだな俺。
評価はA−。

ジグβは神ですか (講談社ノベルス)

ジグβは神ですか (講談社ノベルス)

*1:《「嘘、じゃあ、やっぱり女装ですか?」加部谷が近くに来て、まじまじと水野を見る。「そういえば、胸が小さいですね」/「貴女だって、人のこと言えますか?」》(75p)《「なんか、よくわからんくなってきたな」雨宮が呟く。「セザイマルさんって、誰ぇ。人間の名前? 漁船じゃなくて?」》(291p)etc.