古川日出男『僕たちは歩かない』角川書店

ネタバレ一応注意。
最新長編、今回の奇想は、2時間多い/26時間の、東京。そこで求道する、シェフたち。選ばれし、何人かが、そこに立ち入ることができる。
その異界はやがて、「冥界」へと繋がっていく。死者との…死んだ仲間との再会を目指して、料理人たちはそれを目指す。「地に足を付けてはならない」、そうすれば蓋が閉じてしまう、そのルールの下に。
さまざまな手法を通じて冥界を目指す後半の展開は、我々の記憶するゲームの…RPGのそれだ。ダンジョン攻略の興奮だ。我々はまた記憶している。古川のデヴュー作は「ウィザードリィ」のノベライズであり、日本における小説の最高傑作『アラビアの夜の種族』は、その「死んだ子」の遺伝子を受け継ぐものだった。そうした意味でこの作品もまた、彼の「種族」としての血が受け継がれている。
100頁ほどの中篇であるし、文章のビートも抑えめではある。シェフたちの一途さ、ファンタジックな挿画が我々にもたらすのは「童心」であり、その意味で「オトナの童話」であるのかもしれない。RPGに似た、この小説は。しかしその中心的なモチーフにおいて、フルカワ小説の正当なる眷属であることを、この小品は語っている。
…ああ無理だ、天才の文体模写なんて。
作品の評価はB。

僕たちは歩かない

僕たちは歩かない