いしいしんじ『プラネタリウムのふたご』講談社文庫

ネタバレ一応注意。
最初に云っとくけど、はてなパーカー欲しい!
さて、「ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になった」ふたごを主人公にした今回のいしいメルヘン。いつも通りの豊潤な文章と、感動的なエピソード。特にタットルが外国人の工員を集めて上映会を開くシーンと、兄貴がブレイクスルーを果たすシーン。キラリと光る文章とストーリーテリングの妙はそこかしこで感じ取れるが、これまでの彼の作品に比して、「イメージ」の煌きにはやや乏しい気がした。才気の凄みがやや薄いかな、と思う。

「しかし三人の演じる芝居は、どこかしら古典めいた気配をもっている。新作劇と呼ぶより、神話をきかされているような感じをうける。そして周知の通り、神話には魔法、つまり手品がつきものである。うみがめテンペル一座の演目に、意味をもとめようという気がわたしにはおきない。意味以前の、おおきなかたまりとのつながりを、からだの底に感じてしまうのだ」(377p)

とは作中、テンペルの一座が評された言葉だが、いしいしんじという作家が持つ「イメージ」を「魔法」となぞらえれば、これはそのまま彼の小説に当てはまるものだし、この作品にやや物足りなかったのはその部分であったのかとも思う。タットルが病院を彷徨うシーンなどもなかなか良かったのだけれど、ラストにはもっと圧倒的なものを期待してしまった。

作品の評価はB。

プラネタリウムのふたご (講談社文庫)

プラネタリウムのふたご (講談社文庫)