『哀れなるものたち』

@サロンシネマ

脳移植手術によって生まれ変わった主人公・ベラの大冒険を描くSFアドベンチャー

アルジャーノンに花束を』的にヒューマンなお話かと思ったら全然違ってて、グロテスクで猥雑で、プリミティブで本能的。最初から最後まで倫理観壊れてるし、セックスの奔流はとめどもない。才気とエネルギィに満ち満ちてはいるが、サイケデリックな映像表現も含めて食傷のきらいがないではないし、良い意味でも悪い意味でも箍が外れた怪作である。

そこを一番感じたのはマーサとハリーの扱いで、あれだけ魅力的でベラの導き手になりそうなキャラを、あの程度の扱いにとどめたのが、一般的なドラマツルギーをよしとしない感じがしていて、物足りなくもかっこよかった。原作準拠か? んで普通船上とパリは逆じゃない? …ダンカン・ウェダバーンの凋落は笑えたけども。

凡人の物差しではなかなか計り難い作品ではあるが、エマ・ストーンの熱演は間違いのないところであるし、アカデミー主演女優ぐらいはマストでは。作品としてはぶっちゃけ、『嫌われ松子の一生』の方がオモロかったな、なんて(小声)。