筒井康隆『敵』新潮文庫

ネタバレ注意。

隠居した元大学教授、渡辺儀助の孤独な生活と、そこに忍び寄る「敵」の影を描く、長編老人小説。

老爺の生活の細部と妄想を事細かく描写しているだけなのに、独特のおかしみが漂っている。金銭感覚のおかしさとか、一人称で描かれているが故の戯画感があってよいよね。

儀助の孤塁の輪郭が徐々にほどけていく物悲しさ、「敵」の唐突な得体の知れなさも不気味でよかった。佳作です。

評価はB-。