小川哲『嘘と正典』ハヤカワ文庫JA

ネタバレ注意。

SF、あるいはスリップストリーム短編集。

歴史改変SFである表題作は、冷戦下のスパイものに共産主義の成立過程を絡ませて読ませるし、スペシャルウィークという絶妙に卑近で懐かしい固有名詞から浪漫を展開させる「ひとすじの光」、濃密な音楽民俗小説「ムジカ・ムンダーナ」など、独特のケレン味が物語の創造性に昇華され、オリジナリティとクリエイティビティが豊かに感じられる作品集です。

文章も端正。物語を読む愉しみに浸れます。

評価はB。