『グリーンブック』

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1962年アメリカ、黒人ピアニスト・ドン・シャーリーと、彼にツアー・ドライバとして雇われるブロンクスのイタリア系アメリカ人、トニー・バレロンガの二か月のアメリカ南部ツアーを描く、ロード・ムーヴィ。

ヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリも素晴らしい熱演、ドロレス役リンダ・カーデリーニも出色の説得力でした。お話じたいもヒューマンな感動に涙ぐむシーンがいくつもあって、題材の割に音楽の存在感に若干の物足りなさはあれ、とてもいい映画だと思いました。特にモーテルでドンがトニーの手紙を褒めるシーン、ラストのドロレスとドンの抱擁が最高でした。手紙周りばっかりや。

一方で、この愛すべき作品が批判されている部分も分かる気がしていて。実際のモデル人物との差異についてはお話として飲み込むとしても、この主題を表現するにあたり、やはりストーリィが類型に拠って短絡しているように感じられる部分は否めない。ドンの抑圧は未消化…って別に消化できるようなものではないけれど…だと思うし、それをアカデミー作品賞として権威づけられてしまうのもあまりいいことだとは思えません。

しかしそうした複雑な感情も含め、この世界一難しい主題に向き合わせてくれる、作品としての力だとも思います。Fuck All Racism.