永山則夫『無知の涙 増補新版』河出文庫

ネタバレ特になし。

「連続射殺魔」永山則夫の獄中手記。

イメージしてたのと違ってた…。来し方を振り返るとか、事件への悔恨とか、そういうものとしての手記かと思ってたけど、実際のところ、当時二十歳そこそことしては早熟な、哲学的・社会科学的な思索が延々と続き、そこにセンチな詩作や短歌がフェードインするといった内容。

一冊の本としては、なかなかな奇書の佇まい。マルクス主義社会主義への傾倒は時代性として読めるが、そういった部分以外については、どうにも字面を上滑りしてしまう読書だった。

思索の是非はよくわからない中で、「私の花」(68-69p)の絶望感や、「十月の雨は冷たい」(97p)の幼少期回顧の哀しみは胸に迫った。そういうのがもっと読みたいと思うのは、下世話な凡人ですよね…。

記録のみ。

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)