七河迦南『七つの海を照らす星』創元推理文庫

ネタバレ注意。
児童養護施設・七海学園の七不思議に関連して起こる事件を描く連作短編集。第18回鮎川哲也賞
素晴らしかったです。鮎川賞史上でも屈指の作ではないかと思います…個人的には『凍える島』か『ジェリーフィッシュは凍らない』かコレ、という感じ。
それぞれに問題を抱え(多くは背負わされ)、時に屈折しながらも、根底の純粋さを失わずに生きる子供たちの姿、それを助け、また助けられながら寄り添う大人たちの思いが丹念に描かれて感動的なドラマを紡ぎ出しつつ、施設管理/行政上の問題点を同時にプロット/トリックの盲点とするなど、専門的な知識・ディテールは、物語の駆動にもミステリとしての構築にも生かされて、その構成力は新人としてはめざましく上質なものです。次の『アルバトロスは羽ばたかない』への期待も無限大に高まります。
「滅びの指環」における、やや見えすいたプロットを支えてセンスのいい伏線(「ふたりのロッテ」!)、「裏庭」の犯人たちの、せつなくも微笑ましい動機…というか心情、といったあたりが個人的に感興が深かったです。時に執拗の度を超えて過剰な伏線があったりする*1し、連作通した仕掛けもその延長上にあって俺にはトゥーマッチに感じられないでもなかったけど、そうした細心は、ここに描かれた世界への敬意と、それを語る物語への真摯さの表れとして、この作品にある好ましい風合いの何よりの所以となっていると思います。
ウチのママンに読ませたろ。あの人施設で働いとったし。
評価はB+。

*1:実践学園の園長を床屋にしたのは笑ってしまった。