青山文平『半席』新潮文庫

ネタバレ注意。
文化年間の江戸、若き徒目付・片岡直人が、様々な刃傷沙汰の背後にあるものを見抜く、武家時代ミステリ連作。
ホワイダニットに特化したプロットは、それぞれに老いた侍の悲哀を映して哀感ある時代小説としての風情を醸しつつ、ご近所トラブルとか、医療情報の真偽性とか、そもそも高齢化した武家社会における「仕舞い方」の問題とか、すぐれて今日的な批評性を備えているあたり、クリティカルで完成度が高い。
人誑しの上役・内藤雅之との、社会人誰もが羨む関係性や、行く先々に現れて解決のヒントをくれる謎の男・沢田源内との仄かな友情など、人情の機微も爽やかに描かれている。
聞いていた評判通り、質の高い時代ミステリでした。
評価はB−。

半席 (新潮文庫)

半席 (新潮文庫)