ネタバレ一応注意。
戦前の昭和、十九歳の仏教僧・柳が、檀家の美しい人妻との不倫や左翼運動との関わりとの中で、仏僧の「快楽」…《俗世の快楽(カイラク)から脱け出すことが、仏弟子たるものの快楽(ケラク)である。》(上巻17p)…について懊悩する長編。
宗教というものについても、また戦前の左翼運動についても、新鮮に興味深く読むことができた。自身仏寺の生まれであるという作家の、表現の必然を感じる濃密な大作。未完ということがあり、この物語がどこまで行き着くものだったのか…トリックスター・穴山の暗躍を中心に…、期待は肩すかしになってしまったが、いずれ『邪宗門』クラスのものではなかっただろうな、というのも正直な感想ではある。
しかし予想外に読み易く、愉しくはあった。『ひかりごけ』なんかも読まなかんな。あと嫁の随筆も。
評価はC+。
- 作者: 武田泰淳
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/10/11
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