大江健三郎『われらの時代』新潮文庫

ネタバレ注意。
年上の情婦と鬱屈した生活をおくる仏文学徒、天皇の御幸に手榴弾を投じようとする在日韓国人のジャズドラマ…何人かの戦後青年の生の交錯と破滅を描く長編。
初大江だったんだけど、ちょっとイメージと違ってたわ…もっとノーブルで思弁的なものかと思ってたけど、性と暴力の奔流がドぎつく迫って来る感じ、初期の村上龍をもっとエスカレートさせたみたいだった。文章もかなり粘着質にブンガクしてて読み難いし、登場人物もアレな連中ばっかりで感情移入もできないけど、そのむせ返るように濃密な世界観からは、「穢いは綺麗」的なある種の美と、とにかく闇雲な迫力・切迫感は伝わってくる。
テロリズムもシンボリックで、俺がこの辺り掘ってるモチベである「時代」の史料性という部分でもトガり過ぎてて参考にならなかったけど、まあ経験値という意味ではよかったと思う。『万延元年〜』『芽むしり仔撃ち』あたりも読んでみたいけど、よっぽど身心整ってる時じゃないとキツそうだな…。
評価はC。

われらの時代 (新潮文庫)

われらの時代 (新潮文庫)