芦原すなお『雨鶏』ヴィレッジブックスedge

ネタバレ注意。
四国から上京した大学生の主人公が送る、酒と麻雀(と友情)の日々。
典型的なモラトリアム小説で、芦原すなおの筆なのでそりゃ愉快ではあるけど、特に前半は主人公連中の怠惰の度が過ぎて…そしてそこに戻れないリーマンの身からのやっかみと自己反省もあって…苛立ちながら読んでいたけど、後半、「フリューリング」や「偏屈王」の章あたりからはそれにも慣れ、作品本来の愛らしさ、青春小説としての輝きを味わうことができた。
でも偏屈王はちょっともったいないと思う。あの章の問答だけでも魅力あったけど、この人の元で主人公が学問に目覚めでもしたら、この上なくアツいビルドゥングス・ロマンだったと思うのだけど。
まあそうした王道を往かないところも、この作家らしい飄然の魅力とも思いますがね。
評価はB−。

雨鶏 (ヴィレッジブックスedge)

雨鶏 (ヴィレッジブックスedge)