高橋和巳『わが解体』河出書房新社

ネタバレ特になし。
大学紛争をめぐる、回顧と評論集。
小説においては、濃密で頑健な文体が印象的だけど、評論では無駄がなくスマートで、より理知的な印象。
そうした知性が、描かれるような混乱の中で、深い困惑と苦悩、その果ての自己「解体」へと至ってしまうこと、その記録である文章に、憂愁と寂寥が色濃くなるのもむべなるかな…東洋史教室内での弾劾文書とか、心中思ってせつなすぎる。
そうした、言ってしまえば「痛ましい」文書群の中にあって、「死者の視野にあるもの」は、力のある素晴らしい文章だった。ラストの段落は社会運動を考える上で、最も大事なことが凝縮されていると感じる。
評価はB+。

わが解体 (1971年)

わが解体 (1971年)

貴重な本をお譲りいただき、ありがとうございました。