芦辺拓『メトロポリスに死の罠を』双葉文庫

ネタバレ注意。
テロリストによって大阪環状鉄道がジャックされるクライムノベル。「自治警特捜」なるシリーズなんだけど、読んでいるはずの前作の記憶は欠片もなくて…これだけ気持ち悪い読み心地なら憶えててもよさそうなもんだけど。
シリーズの基本設定からして中央集権官僚体制批判に依拠し、さらには原子力行政批判も加えて、あまりにもあからさまに披瀝されるそれら作者の政治思想に鼻白むことが多かった。俺自身もどっちの側かつったらこっちよりの思想だけど(原発からの電力供給には金払いたくないと思ってるし)、こういう独善的でクレバーさに欠ける提示の仕方をされると反感すらおぼえたよ。エンタテインメントとしても散漫で、ストーリィのピークを作れていない。
元新聞屋って出自が悪い方向に出た迷作だけど、マスコミはここに描かれる腐敗の構造に含まれていないってのも、自己批判が足りないんじゃないですかね。
評価はC−。

メトロポリスに死の罠を (双葉文庫)

メトロポリスに死の罠を (双葉文庫)