松尾由美『雨恋』新潮文庫

ネタバレ注意。
ジェントルゴースト・恋愛ミステリ。
かなり素っ頓狂な筋の運びですが、同時に松尾由美らしい理知的な筆致もあって、ミステリとしての機知も恋愛小説としての喚起力も兼備した佳作でありました。
特に恋愛小説としては、途中まではメインの二人の「高まり」に納得のいかないものを感じていたのですが、「金色の毛布」というイメージが提示されてからはなぜかすんなりと受け入れられたし、そこからつながるラストシーンの美しさは出色のものです。この物語のラストシーンとしては、この形、そしてこの一文こそが最上のものであろうという確信を抱かせてくれるラストシーン、そうそう巡り逢えるものではありません。書き上げてすげーカタルシスだっただろうな。
余談だけどtacicaの「蜜蜂の毛布」って曲、この小説にインスパイアされてたりしないかな。ないかな。
評価はB。

雨恋 (新潮文庫)

雨恋 (新潮文庫)