青井夏海『星降る楽園でおやすみ』中公文庫

ネタバレ注意。
無認可保育所での立て籠もり事件を描く、変種の誘拐ミステリ。
誘拐モノとしてのプロットのヒネリもあるけど、眼目は事件そのものというより、無認可保育所という場、預かる側預ける側双方の人間模様にあるのでは、と思った。リアリズムなのかカリカチュアなのか、どちらかというと後者に傾いているようにも思うけれど、結構「厭な感じ」がして、それは見所だと思いました。その意味では単にダメな奴らの出会いの場でしかなかった作品とか、フェミニズムに短絡した作品とかより、「無認可保育所」という今日的な舞台設定に必然性は感じられました。
群像劇として、各人の悩みや鬱屈、エゴイズムが容赦なく書き立てられるのだけど、その割にラストはヌルく感じたりもし。決着にはもう一工夫欲しかったかなあ。
評価はC+。

星降る楽園でおやすみ (中公文庫)

星降る楽園でおやすみ (中公文庫)