柄刀一『殺人現場はその手の中に』祥伝社文庫

ネタバレ一応注意。
龍之介シリーズの連作。
プロットにもロジックにも隙が多いなあ、というのと、なんつっても文章や描写がやっぱりヘンなので、どうしても集中力がそがれるのです。

 瓜実顔は真珠色の光沢で、黒々とした瞳には濡れたような細かな光が宿っている。長い髪をまとめあげていたが、無造作でありながらそこに、しどけないとも見える艶っぽさがないこともなかった。
 しかしこの人、性格は実にふんわかしていて裏表がなく、清潔感があり、どこか頼りないので同性からもドジ子として愛される存在だった。
(「ページの中の殺人現場」、255-256p)

本文中たった五行に、これだけのツッコミ所を仕込むこの手練れのワザw
同作のネタと、造本に仕込まれたギミックなんてビブリオマニアックで面白いと思ったけど、全体の印象はやはり「柄刀はSFに限るなー」ということでした。
評価はC。