平野啓一郎『文明の憂鬱』新潮文庫

ネタバレ特になし。
「文明批評」のエッセィ集。
短いものが多く、内容的にもクリティカルなものでなかったりはするけど、それでもベースにある知性と、文章の重厚なクオリティが兼備されていて、自然刺激的なものになるなあと思った次第。
ちょっと笑った一節。

(前略)私はふと突飛な例を思いついたが、サディスティックな性的倒錯者が、異性に対して加虐的行為に及ぶ時、彼が相手を「玩具」と見做しているか、「ペット」と見做しているかで、同一の行為に於いても、その意味は大きく違ってくるであろう。恐らく純粋に性的倒錯と呼び得るのは前者の方で、後者はいわば、宗教的な生贄の近代社会に於ける細分化され、歪曲化された形の一つである。
(「「玩具」と「ペット」」、12p)

…刺激的、って別にこういう意味じゃないんだけど、なんか『高瀬川』以来、俺的にすごくこういうイメージw
評価はB。

文明の憂鬱 (新潮文庫)

文明の憂鬱 (新潮文庫)