F.ケラーマン/高橋恭美子(訳)『豊饒の地』創元推理文庫

ネタバレ一応注意。
ロサンゼルス郊外が主な舞台。描かれるのは『冷血』じみた*1一家鏖殺事件と、主人公の刑事の恋と友情の煩悶。
アメリカ」的な家族問題、あるいは郊外社会の病理は事件に関わって、またユダヤ教徒の戒律といった知見、ベトナム帰還兵というある意味お定まりの批評性は主人公のプライベートに関わって、バラエティに富んだ切り口を見せてくれる。
それらはそれぞれ興味深くはあるけれど、互いに連関し合って物語を織り上げる、というレベル、あるいは志向性にないと思った。バラバラとまではいかずとも、噛み合わせが悪い。
シリーズ三作目とのことなので、その辺は独立した長編としての完結性と、シリーズ作としての連続性にそれぞれ目を配って語るべきなのだろうけど、俺はあいにくこれしか持ってないし、多分今後も探してまで手に取らない。
まあ、間が悪かったということで。
評価はC。

豊饒の地〈上〉 (創元推理文庫)

豊饒の地〈上〉 (創元推理文庫)

豊饒の地〈下〉 (創元推理文庫)

豊饒の地〈下〉 (創元推理文庫)

*1:舞台設定や雰囲気も似てるところあると思う。