ネタバレ注意。
誘拐サスペンス・ミステリ。
誘拐された少女の視点と、捜査側の視点を入れ替えながら展開。登場人物が皆クセのある造形で、愉しく読んだが、それを描き込んだが故に若干の肥大傾向にはある。
オズ・アルモの弁護士がかつらにもっと金をかけていないのは、残念なことだった。その若々しい茶色の房毛は、あたかも自らの意思でそこに這いあがったかのように、白髪交じりのこめかみの上に鎮座ましましている。特別捜査官アニー・パイルは思った――この弁護士、かつらに名前をつけたり、蚤よけの首輪を買ってやったりしているのではないだろうか。
(548p)
…なんて、クライマックスでこんなどうでもいい描写要らんだろ、とも思うけど、笑っちゃったし、実は嫌いな筆質ではなかったり。
その独特の人物造形は、ミステリとしての構成に必然的なものだと読んでて実感される。主人公格、トラウマ抱えの捜査官・ルージュの造形はミスリーディングとしてよく機能していたし*1、何より誘拐された二人の少女、特に聡明で稚気に溢れたサディーの造形には卓抜なものがある。彼女に関するプロット上のサプライズは、途中で読めてしまう類のものであってなお、物語の結末を哀しくも爽やかに印象深いものにしている。
「アイデア」ではなく、作家の「筆力」の勝利であろう。
評価はB。
- 作者: キャロルオコンネル,Carol O'Connell,務台夏子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/09/23
- メディア: 文庫
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*1:途中まで絶対犯人だと思ってた…まあ彼含む容疑者キャラが強い分、真犯人は完全に霞んだが。