間羊太郎『ミステリ百科事典』文春文庫

ネタバレ特になし。
SF作家、式貴士の別名義。ワセミス出身てことで、ミステリをネタにしたエッセィ集です。
「人体」「風物」「生物」といった各項目ごとに、それを用いたトリックの作例、作品紹介をする、ってのが基本構造です。ネタバレは容赦なく、他の凡百の作品ならともかく「チャイナ橙」あたりを丸バラシしているのは、どうかなーと思わないでもなかったですが。
「コレ読みたい!」とアツくなるような紹介にはなっていませんが、基礎教養として目を通す価値のある本だとは思います。昔の国内作品とか見事にバカバカしいトリックが目白押しで、知性に恵まれた筈の人々が、「それ」に魅入られたばかりに、ひたすらバカバカしいことを考え続けざるを得なかった、その蓄積の上にこそ、僕らの愛する「本格」があるのだと、そんないとおしさを再確認するにもいい本でしょう。
評価はC。

ミステリ百科事典 (文春文庫)

ミステリ百科事典 (文春文庫)