坂口安吾『堕落論』新潮文庫

ネタバレ特になし。
家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第七回課題本。
初の評論集であります。
表題の論旨としては明快で、戦時下、あるいはそれに先立つ日本史上の様々なパラダイムイデオロギー安吾言うところの「歴史的カラクリ」…にお行儀よく従うことから脱却して、「裸の生」「真実の生」「生きるべき生」へと「堕落」しなければならない、というもの。天皇制、皇国史観、国家体制への批判は含まれますが、左翼的言説がすべての本ではありません。より本質的で、普遍的な言説。
文章は力強くありながらも稀有に洒脱。そのクオリティは、このある意味においては「当たり前」の檄文が、後世長く読み継がれていることからも明らかでしょう。《街はふるさと》《私を海を抱きしめていたい》など、敬愛するロック・アーティストが引用したくなった気持ちも分かります。
歴史研究の評論はあまり面白いと思えませんでしたが、表題作、あるいは文化論などの印象を中心に、さらにいろいろ読んでみたいと思わせる、挑発的な本でした。
評価はB。

堕落論 (新潮文庫)

堕落論 (新潮文庫)