松岡圭祐『千里眼』小学館文庫

ネタバレ注意。
表紙周りのルックス、煽りのコピー、共に最高に軽薄そうな小説だけど、臨床心理学、カウンセリング部分のディテール・考証は意外と真面目。それは『催眠』と同じで、美点と捉えてもいいんじゃないかな。
今回はそれに加えて、映像化への意識ムンムンのスペクタクルを加えて、小説のスケールを拡張しようと試みられたわけですが、それが見事に空回っています。リアリティというものが、カケラとしてありません。
黒幕の正体、というかその人物が物語において果たす役割が、かなり早い段階で見え透いてしまうので、酷く醒めた気持ちのまま読み進めることになりました。ラスボスなのに造形薄い、トラウマ安い、(シリーズ睨んだ)伏線が自己満、の三重苦。
心踊らないエンタテインメントでしたが、唯一良かったのは、美由紀が仙堂を非被洗脳者だと見破るくだり。そこだけ無駄に小粋でした。
評価はC。

千里眼 (小学館文庫)

千里眼 (小学館文庫)