R.レンデル/宇佐川晶子(訳)『眠れる森の惨劇』角川文庫

ネタバレ一応注意。
竹本健治に同題の長編があったように記憶していますが、こちらは英国の女流大御所の作品。
森に囲まれた老女流作家の邸宅での殺人事件を、それに関わる人々の細密な描写を積み重ねて描く。訳者あとがきから俺の印象に合致したところだけを抜き出せば、《物語は長く》、《情景描写は細か》い。まさに。
500p超、あまりなめらかとはいえない訳文で、改行の少ない、丹念あるいは執拗な描写を読まされ続ける。起伏に乏しいストーリィと、工夫の足りないプロット、この地味さは「古き良き」風情を感じさせもするが、俺にとっては単に新味に乏しく、疲労を感じさせるものでありました。イギリスの女流ミステリってこういうイメージなんだよね、セイヤーズとか。『ナイン・テイラーズ』も地味ではないけどキツかったなあ…。
黄金期的な風合いであるのに、普通にケータイ使ってたり、あるいは「看護士」とかジェンダーフリーな言葉選びへの言及があったり、その辺はこの物語が現代のそれであることを感じさせてくれましたが。
評価はC。

眠れる森の惨劇―ウェクスフォード警部シリーズ (角川文庫)

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