Cocco 『エメラルド』

7th。
初のセルフプロデュース作品。
グランジ要素やその根底の赤黒い情念を抑えめに、より豊かな情感と色彩を湛えたポップ・アルバムという方向性は、前作『きらきら』から引き続いていて、僕はこの路線の支持者です。
セルフプロデュース作ですが実際アレンジは堂に入ったもので、「Stardust」や「絹ずれ」に広がる圧倒的なスケール感とカタルシス、これこそ僕がCoccoに求めているものなのですが、それがセルフプロデュースでも十全に展開されているということがとても頼もしい。根岸孝旨や長田進といったマエストロたちとの仕事が、完全に血肉になっていることが分かります。
ただ…。
RYUKYUDISKOと組んだハウス/テクノ曲もいいアクセントになっていると思いますが、ふんだんに用いられたエスニック音楽要素や「島言葉」によって表明される「沖縄」のアイデンティティにだけは、僕はどうにもなじめませんでした。「三村エレジー」はのっけから排斥されてしまうように感じたし、「ニライカナイ」のエイサーもことによっては滑稽に聞こえてしまったり。
ただその印象が一番大きいのは、「絹ずれ」が「〜島言葉〜」だからなのでしょう。遠雷のようなギター・ノイズを背景に流麗なピアノが響くイントロから、力強いドラムとCoccoの声が厳かに響き、それが一体となってサビでエモーションを炸裂させるこのド名曲を、その「言葉」のせいで僕は全身で浴びるように聴くことができないのです。リスナとしての懐の狭さを露呈しているだけなのでしょうが、それでも僕は、これを「分かる言葉」で歌ってほしかったという思いがどうしても拭えないのでした。…でも多分、なんかに「標準語」版が採られてるんだよね。そっち聴けって話なんだけど。
「Stardust」「絹ずれ」という二大名曲以外では、「卯月の頃」を思い出させる美麗なバラード「玻璃の花」、Cocco・ミーツ・中島みゆき的な情念のワルツ「Light up」がお気に入りでした。

エメラルド

エメラルド