吉田修一『東京湾景』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
東京湾岸を舞台にした恋愛小説。
文芸評論的には、こういうのを「人間が描けている」とか言うのでしょうか。初めて読んだけど、描写・造形には定評のある作家だというイメージがあったので、きっとそうなのでしょう。
でも俺には、登場人物が誰も魅力的に思えなかったし、それどころかうまく人格が掴めなかった。亮介も美緒も、なんだか印象が拡散してしまって。直截的だけど時に臆病で、どこか不条理で複雑で。そういうのが「人間」だよ、「恋愛」だよ「男と女」だよ、って言われたら、「さようでございますか」つって引き下がるけどさ。
基本女性ファンの多い作家ですよね。オトコが読むには適していないのかもしれない。多分、雰囲気だけ読むなら、ラストの処理も含めてなんとなくいい感じの味わいだから。俺はもう読まなくてもいい気がするけど、『悪人』は読んでみたいなあ…。
評価はC+。

東京湾景 (新潮文庫)

東京湾景 (新潮文庫)