新野剛志『八月のマルクス』講談社文庫

ネタバレ注意。
乱歩賞受賞作…ってもこの肩書、もう僕にはマイナス要素でしかありません。
今回の「ギョーカイ」は、お笑いを中心とするテレビ業界。収録中の事故をめぐって、小人物たちがうだうだと。
主人公は引退した芸人って設定なんだけど、行動や思考がステレオタイプなハードボイルドに規定されているから、その落差がなんだか滑稽なのです。ハードボイルド的に考える、ツカミやオチのなんたるか。ハードボイルド的に拳を奮う相手は、後輩の「快速チョキンチョキン」。
…オフビート狙ってやってるわけじゃないと思うんだよね、だって地の文こんなんだぜ。

 低く垂れこめた雲は相変わらずだった。今にも雨がこぼれ出そうだ。まるで発覚前の嘘。取繕ったものが今にもぼろぼろと落ちて来るような気配にやきもきする。どちらも落ちて来てしまえば気は楽になるものだ。
 しかし落ちて来るのを待ってはいられない。私は急ぎ足で新宿御苑前駅に向かった。
(67p)

…「スッと言えよ!」
ツッコんでみたところで。事件の構図的にはまあ、伏線含めて収まるべきところに収まった感はありますが、どうも全体にこうしたぎこちなさが散見されるので、点は辛くなってしまいますね。
そして最も理解し難いのがラスト。どこをどうしたらそうなっちゃうんだ? 《相方もいるのだから。》(386p)とか言って。
…「うまくねーよ!」
零点のオチでございました。
評価はC。

八月のマルクス (講談社文庫)

八月のマルクス (講談社文庫)