樋口有介『探偵は今夜も憂鬱』講談社文庫

ネタバレ注意。
ルポライター兼モグリの探偵、柚木草平シリーズの短編集。

 女の罰が当たって、やはり俺は、地獄に落ちるのだろうか。
(「雨の憂鬱」、114p)

とか言ってるその次の口では《「君が来てくれるなら、俺は老衰で死ぬまで待っている」》(「風の憂鬱」172p)とかのたまうタレスキーぶりに拍手。なぜか第三作から読んでしまって、作家の代表探偵としての存在と二時間ドラマ版の配役*1まで知っていながら初見でしたが、充分笑えました。一人称で、出てくる女性の全員が(女子中学生含めて)「容姿が整っている」という描写、どんだけハードル低いねん、とまず。
でもこの女性礼賛が「おかしみ」の芸として成立しているのは、アーバンなハードボイルドとしての展開・描写に冷徹さが担保されているが故、さらにその上で、柚木草平がココロを傾ける女性たちの、それぞれ異なる魅力がしっかりと描き分けられている故だと思います。端的に小説巧者です。品質が高い。
最近ベストセラー出ましたね。よかったよかった。
評価はB。

探偵は今夜も憂鬱 (講談社文庫)

探偵は今夜も憂鬱 (講談社文庫)

*1:鹿賀丈史。違う…。