島本理生『ナラタージュ』角川文庫

ネタバレ特になし。
貸してもらいました。
世評は高い恋愛小説ですが、僕はまったく面白いと思えなかったです。
ハナからクソ野郎に描かれている小野君については後で語るとして、泉にしても葉村先生にしても、まったく魅力を感じられなかったです。葉村先生だったら名村先生のがマシ。*1
だから特に189pのあたりとか、このレベルのキャラクタたちが感情を交えても、もうまったくどうでもいいのですよね。キャラクタが薄っぺらい割に、それに費やされる描写や挿話はやたらと多くて、ドイツ渡航とか後輩の自殺とか、ストーリィとしての必然性、ひいては物語の力感というものをまったく感じさせることなく、のんべんだらりと文章の羅列が続きます。3分の1の長さですべてが終わる話です。
さて、小野君なのですけど、確かに324p、あまりにも分かりやすく最低なセリフにも笑ってしまいましたが、僕はむしろ、家出から戻った柚子ちゃんに対するセリフにカチンときました。

「それは柚子ちゃんのお母さんが本当に心配してたからだよ。俺たちも君になにかあったんじゃないかと思って心配したよ。だけど、無事に帰ってきてくれて良かった。」
(123p)

…俺が今まで読んだあらゆる小説の内で、ともすれば最も無意味かつ無価値のセリフであるかもしれない。毒にも薬にもならないとはこういうことを言うと思うのだけど、この一節だけでこの小説のまどろっこしさは理解いただけるのでは。
あと、セリフの直前に読点を打たないのが気に入らなかった…もう、全部が気に入らなく思えるなw
評価はC−。

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)