山本兼一『利休にたずねよ』PHP研究所

ネタバレ一応注意。
ひょんなことから直木賞受賞作。
…しかし、あれ、こんなもん? とやや拍子抜けの感。
利休の切腹から始まって、彼にまつわる人物の視点をさまざまに入れ替えながら時系列を遡り、その「茶道」の魔境の原点へと至る。その特徴的な構成も、耽美の鬼たる利休のキャラク*1も、感興を得た部分はあるのだけど、それを飾る文章がなんだか簡素で華というものに欠け*2、小説全体に説得力がない。
利休やその周辺人物がさまざまに語る「美」についてもそうなのだけど、なによりこれだけ引っ張ってようやくご開帳の「女」、もうちょっとなんか描きようあるだろ、というあっさりぶり。俺はこの程度のファム・ファタルを愛でられない。
審査員の先生方にはこのぐらいがちょうどよかったんでしょうか。僕がくどいのが好きなんでしょうか。どちらにせよちょっと残念な作品でした。
評価はC。

利休にたずねよ

利休にたずねよ

*1:対比的に石田三成とかのキャラクタがクソつまんねー。

*2:それが「侘び」というものでもなかろうて。