友部正人 『ベスト・セレクション』

借りたCD、これで最後。
なんでte'、LITEと来て友部正人やねん、とは思うけれども。借りた身ですから。
ギターとハーモニカ、一部ピアノ(坂本龍一!)、というオーソドックスなフォーク・アルバムです。『また見つけたよ』『誰もぼくの絵を描けないだろう』という二枚のアルバムからの、廉価版ベスト・セレクション。
名前はもちろん知っていて。影響を公言するアーティストは現在でも結構目にしますが、憶えてるのは銀杏の峯田とかかな。サンボ山口とかもそうだっけ(違うかも)。峯田はさもありなん、という感じ。フォークの大御所であり、岡林信康と並ぶカリスマです(適当)。
フォークっていうとさ、どうしても「神田川」とか「なごり雪」とか、ああいう貧乏臭くじめついた「四畳半の詩情」をイメージしてしまうし、同世代のおっさんたちが青春を回顧して疲れた自分を慰撫するという聴取行動を嫌悪してもいたのだけど。この音楽はだいぶイメージが違った。
正直に言って、俺はあまり好きなセンスではなかったのだけど、現代詩的に鋭利な「ことば」が、どの曲にも濃密に息づいている。パーソナルな抒情もあるけど、詩としてのクオリティを備えた社会的な批評性、「四畳半」に逼塞しない世界的な視点、それらが混然一体となって、独特の詩世界を構築している。メロディは一本調子であまり見るべきところがないが、ブルージィな歌声の訴求力にはさすがのものがあるので、俺はむしろこの作品をポエトリー・リーディングとして聴いた。
だけど…そうなるとなおさら「センスが合わない」というのは辛い。ちょっと俺には濃すぎる世界だった。≪もう少しスマートに なんとなく分かるくらいに/それでいて心に突き刺さるような言葉≫というのは愛するフォークロック・バンドのとある一節だけど*1、俺にはこのぐらいのユルい決意表明がちょうどいい。それに貶したけど俺、「四畳半の詩情」ってのは嫌いじゃないよ。なんだったら全共闘世代に生まれたかったぐらいだ。
あーなんか、「目白通りいつも通り」(by東京60WATTS)が聴きたくなってきたので、そうします。

ベスト・セレクション

ベスト・セレクション

*1:東京60WATTS「たまにはこんなラブ・ソング」